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X線CTR散乱による3D原子イメージング
 
 
    
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 大学院

 研究内容
Institute for Solid State Physics,
University of Tokyo Home Takahashi laboratory
 表面X線回折法は表面・界面の原子配列を決定する極めて有力な方法である。とくにCTR(Crystal Truncation Rod)散乱を測定する方法は、基板結晶に対して表面・界面構造を3次元的に決定できるので、様々な系に対して適用され成果を挙げてきている。解析にあたっては、通常、ある初期構造モデルを仮定して、構造モデルに対して計算された回折強度と測定された回折強度との一致が良くなるように、最小二乗法などにより構造モデルを最適化している。
 これに対して、近年、測定データから位相問題を解決して、直接的に表面や界面の構造を決定する方法がいくつか開発されてきている[1-3] 。1つは、我々が開発した方法で、測定データを適当に規格化した後にフーリエ変換することにより原子イメージを電子密度として再構成する方法である。これは、光学におけるホログラフィに相当し、蛍光X線ホログラフィで利用されている方法と基本的には同じである。これとは別に、PARADIGM[2], COBRA[3]と呼ばれる2つの方法も独立に開発されている。我々は、これらの方法を単独あるいは組み合わせて利用することにより、幾つかの成果を挙げてきた。
X線回折の散乱過程は、1回散乱でほぼ正確に記述できるので、位相問題を克服できれば、回折波の振幅を逆フーリエ変換することにより、電子密度分布、すなわち、原子配列を決定することができる。さらに、電子密度分布の異方性を吟味することにより結合に関する知見も得ることができる。X線を用いることのもう一つの利点は、表面層のみならず、超薄膜、さらには、埋もれた界面の関する構造も得られる点である。
 一般に、位相を回復して直接的に構造(電子密度分布)を求める方法では、高精度で広範囲の逆空間の実験データが必要とされる。このような要求を満たす測定法の開発も放射光施設との協力の下に進めている[9]。
 
 研究成果
1)    ホログラフ法の検証実験: a-Si/Ge(1ML)/Si(001)[4]
2)    Si(111)-Fe超薄膜の埋もれた界面構造の決定[5]
3)    高指数表面の再構成構造の決定: Si(557)-Au [6]
4)    Si(111)-Bi超薄膜および埋もれた界面構造の決定[7]
5)    有機超薄膜の構造: pentacene /Bi/Si(111)[8]
 
[1] T. Takahashi et al. : Surf. Sci. 493, 36 (2001).
[2] D.K. Saldin et al. : J. Phys.:Condens. Matter. 13, 10689 (2001); 20, 304208 (2008).
[3] M. Sowwan, Y. Yacoby et al. : Phys. Rev. B 66, 205311 (2002).
[4] K. Sumitani et a.l : Jpn. J. Appl. Phys. 42, L189 (2003).
[5] T. Takahashi et al. : e-J. Surf. Sci. Nanotech. 7, 525 (2009).
[6] T. Shirasawa et al. : Phys. Rev. B 84, 075411 (2011).
[7] W. Voegeli et al. :Phys. Rev. B 82, 075426 (2010).
[8] 大山真実、東京大学大学院、修士論文(2012.3).
[9] T. Matsushita, T. Takahashi, T. Shirasawa, E. Arakawa, H. Toyokawa, and H. Tajiri: J. Appl. Phys. 110, 102209 (2011).