固体表面・界面を一原子層のオーダーで制御し、この‘厚さ数Åの‘物質’の性質を理解することは、ナノサイエンス・テクノロジーにおける重要事項です。表面・界面のような特殊な環境下では、3次元物質では見られない特異な原子配列構造が出現し、そこに現れる物性を左右します。従って、これらの超構造を解明することが、表面・界面物性を理解する上で第一に重要です。
シンクロトロン放射光を用いたX線回折を利用すれば、この厚さ数Åの構造も精度よく決定することができます。高橋研究室は、放射光X線回折による表面・界面構造解析法の確立において、先駆的な役割を果たしてきました。Si表面に形成する二次元長周期構造や金属一次元鎖構造、半導体へテロ界面構造などの解析を行っています。
また、これら一原子層の物質が奏でる低次元ダイナミクスも興味深い研究対象です。表面超構造の相転移や、電子線・光励起によって生じる構造変化などを、放射光X線回折や電子線回折、また走査型トンネル顕微鏡による実空間観察によって調べます。
X線や中性子線の散乱の基礎過程,とくに干渉現象を利用して、表面や界面,ナノ構造などを解明する新手法の開発を目指しています。特に回折散乱における「位相問題」に関連づけて、測定された回折データから直接実際の構造を決定する方法を模索しています。
また、X線領域における非線形光学の研究も行っています。例えば、1つのX線光子が絡み合った状態にある2つのX線光子に分かれる、X線パラメトリック変換の基礎研究などを行っています。