シリコンなどのような完全性の高い結晶でx線や中性子が回折を起こす場合、ロッキング曲線に従います。吸収がなく半無限に厚い結晶の場合のロッキング曲線にはダーウィン曲線とエワルト曲線と呼ばれている曲線があります。
ダーウィン曲線の式 エワルド曲線の式
W(またはy)はブラッグからのズレを表すパラメーターで角度スケールで数秒程度の極めて小さい角度です。上の2つ式を求める方法はいくつかありますが、次のようにして求めることができます。
・ダーウィン曲線は有限の厚さの結晶について反射振幅を求め、次に厚さを半無限にする。
・エワルト曲線は有限の厚さの結晶について反射強度を求め、次に厚さを半無限にする。
我々は、2つの曲線の違いを明確にすることができました。!!
回折過程の図
中性子がシリコン単結晶で回折する場合には、ほとんど吸収を受けませんので、2つの式の違いを調べることができます。中性子は上図に示したように結晶の表面や裏の面で反射や屈折をうけます。光りの場合とは異なり屈折角は入射角(y)に依存します。
これまで中性子回折の教科書では、特別な説明もなくエワルト曲線が用いられていました。
我々は上図の表面の最初の反射R1だけを検出するとダーウィン曲線に、他の反射も全て検出するとエワルト曲線に一致することを理論的、実験的に示しました。
反射強度 I を使って式で書くと、
となり、ダーウィン曲線とエワルト曲線には
の関係があることが、わかりました!!
「
エワルト曲線は、表面と裏面で反射した波が干渉性を失っている場合、表面と裏面で繰り返し反射したビーム強度の総和としてとらえることができる。
」ということを、示しており、従来の解釈とは大きく異なります。
Phys. Lett. A 200 (1995) 73/J. Phys. Soc. Jpn. 65(1996)Suppl. A 271-276