X線は、光と同じように物質に入射すると、反射や屈折をうけます。
その時の振幅反射率、振幅透過率は光のフレネルの式で与えられます。
光の反射と屈折 フレネルの公式
反射波:反射率(振幅)
屈折波:透過波(振幅)
X線が光と大きく異なる点は、屈折率が1より小さいことです。
このため真空中(大気中)で、X線を平板状の試料(屈折率n)に入射すると、視射角α
1
がある角度α
c
より小さいと全反射を起こします。この角度α
c
は臨界角と呼ばれています。
nの1からのずれは通常δで表されます。このδは物質の電子密度や波長に依存します。
スネルの法則から臨界角はδと次の関係があります。
下図は、Siウエハに波長1.54 AのX線(CuKα線)を入射したときの反射率曲線(青)と侵入深さ(赤)を視射角α1の関数として示したものです。吸収があるので100%は反射していませんが、臨界角は0.21°です。反射率は強度で示してあります。
我々は、この反射率曲線がブラッグ反射を表すロッキング曲線と等価であることを示しました。
シリコンなどの完全性の高い結晶でX線が回折を起こす場合のロッキング曲線は、ダーウィンにより1914年に導き出されました。振幅反射率は
で与えられます。
この式でWは入射角を表すパラメータであり、吸収が無い場合に100%反射する角度範囲(ダーウィン幅)が±1になるように規格化されたものです。通常、この角度範囲は数秒と極めて小さな角度です。
ここで、入射角を表すWを視射角α1を用いて次のように関係づけると
2つの反射率を表す式は、
となり、等価であることが分かりました!!
多重散乱を取り入れたX線の動力学的回折理論から導かれる反射曲線(ロッキング曲線)と境界条件から導かれるフレネルの反射率の式が、実は同じであることが分かりました。
Surf. Sci. 326 (1995) 347 / J. Phys. Soc. Jpn 65 Suppl. A (1996) 27