日本原子力研究所（茨城県東海村）の改造３号炉C1-3に高分解能後方散乱装置（ULtra Small angle scattering--ULS)という名前の装置を開発しました。
利用目的
この装置は中性子を使った極小角散乱装置、精密光学実験装置等多目的に利用できます。
装置の概要
この装置は精密ゴニオメータ２台(そのうち、１台はpiezo素子を使っていて、角度分解能は0.001秒より小さいほどの精密さです。）、小角散乱用の試料交換台、He3検出器２台が防震テーブル(1mx2m)の上に載せられ、装置全体は0.1度以下の温度安定性をもつ恒温槽内に置かれています。また、最近、小角散乱用の試料の温度可変セルも設置しました。モノクロメーターとしてPG(002)を使っており、使える中性子の波長は4.3Åから 5.1Åですが普段は4.73Åを使っています。
極小角散乱
極小角散乱装置として使う場合は、下図のようにシリコンの(+,-)二結晶平行配置をsettingします。
５回反射のチャンネルカット結晶をモノクロメータおよびアナライザーとして使うことにより、テールのない反射曲線を得ることができるので、角度分解能の高い実験が可能になります。
下図は、試料 を入れないときにアナライザー結晶を回転させて得られた反射曲線です。右図は、左図の縦軸を対数表示したものです。比較のために、平板結晶で１回しか反射しないときの反射曲線ものせてあります。
右図から分かるように、この装置では、q(=4πsinθ/λ)が10の-2乗から-5乗(1/Å)の大きさの領域を測定することができるようになります。
成果
この装置はいくつものグループによって共同利用で使われています。
装置の参考文献
[1] Activity Report on Neutron Scattering Research(Neutron Scattering Laboratry Institute for Solid State Physics The University of Tokyo) ； vol.1(1994)~vol.5(1995)
[2] T. Takahashi, M. Hashimoto, S. Nakatani, J. Phys. Chem. Solid, accepted for publication.
[3] M. Hashimoto, T. Takahashi, J. Phys. Chem. Solid, accepted for publication.
