波数k
0
の中性子線の磁性体に対する屈折率は、
(1)
と書くことができます。ここでδ
n
とδ
m
は
(2) (3)
で与えられる量です。
ここで総和は磁性体を構成するすべての原子の種類についてとられ、
n
i
、
b
i
、
p
i
は各種原子の数密度、核散乱振幅、前方磁気散乱振幅です。
厚さtの磁性体を透過した後の中性子は、そのスピンが磁化に対して平行(+)であるか反平行(-)であるかによって、
(4)
で表される位相差を受けます。このような位相差が実際に生じていることは、中性子干渉計で確かめることができます。
中性子干渉計は、上図のようにSiの単結晶ブロックに溝をつけて3枚の結晶の板を切り出したものです。この干渉計に磁性体の試料と位相板を挿入して、干渉縞の振幅と位相を観察すると下図のような結果になり、(4)式で予想される位相変化を確認することができました。
核散乱振幅や前方磁気散乱振幅は基本的な物理量ですが、これらの値を精度良く求める方法はほとんどなく、このデータの振動を解析することにより求めることができました。
J.J.A.P. 30(1991)L867