X線定在波法
X線が結晶で回折しているときには、入射波の他に回折波があります。シリコンなどの完全性の高い結晶で回折する場合には、回折波と入射波は互いに干渉性があり、その結果定在波ができます。このときできる定在波は回折を起こしている格子面に平行で、その周期は面間隔に等しくなります。
X線定在波法とは、下図に示すように、X線が回折しているときに励起される蛍光X線、光電子などの2次線を測る方法です。これらの2次線は、その発生原子の位置におけるX線定在波の強度に比例しているので、定在波の節の位置にある原子からの2次線の放射は弱く、腹の位置にある原子からの放射は強くなります。
定在波と格子面との位置関係は、X線に入射角によって変わるという性質があります。ブラッグ角の低角度側では、定在波の節が格子面に一致し高角度側では腹が格子面に一致します。このため、結晶を構成している原子から放射させる2次線の収量は、下図の赤い線のように、ブラッグ角の低角度側でディップになり、高角度側でピークになります。
もし、結晶の表面に異種原子が1原子層ある場合には、その原子から放射される2次線の収量は、結晶の最表面層と異種原子層との距離によって変わります。上図の曲線1、2、3は、両者の距離を変えたときに2次線の収量の入射角依存性がどのように変化するかを示したものです。表面層の位置に非常に敏感であることが分かります。これまで、この方法に関する研究の開発から応用まで幅広く研究を行っています。
逆定在波法(コッセル線法)
X線定在波法とは、光学の相反定理で説明できる測定法です。
光源と検出器の関係が互いに逆の関係にあります。
結晶内の着目している原子から放射された蛍光X線のうち、格子面に対してブラッグ条件を満たす方向に放射されたものについては、結晶によりブラッグ反射を起こします。放射した原子の位置と格子面との位置関係により、ブラッグ角方向に放射された蛍光X線の放出角依存性は変化します。その変化の仕方は、相反定理により上図と同じになります。したがって、蛍光X線のブラッグ角方向での放出角依存性を測定すれば、着目している原子と格子面との位置関係が分かります。
我々は、この方法を最初に行いました。下図左に示すような配置で、放射された蛍光X線の角度分布をアナライザー結晶をもちいて計り、ブラッグ角の前後で蛍光X線の収量が変化することを示しました(下図右)。
JJAP 32 (1993) 5159